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- マーク・カーニー氏は8月21日に米国との貿易交渉を打ち切り、200億ドル相当の対米輸出の5%に最大50%の米関税が課されることを容認。カナダも9月8日発動で200億ドル相当の米国産品に同等の関税で対抗した。
- この決断は76%の国民の支持を得ているが、エコノミストはインフレ率が4%に達し、約9万人が職を失って失業率が7%に上昇する可能性があると試算している。
- エネルギーでの報復は10月の住民投票を控えるアルバータ州で反発を招く恐れがあり、ケベック州でも10月に選挙を控える。カーニー氏は米国の物価上昇がトランプ氏を再交渉に戻すことに賭けている。
マーク・カーニー氏は矛盾を抱えて政権運営をしている。カナダ最大の貿易相手国である米国は、貿易障壁を武器として用いる予測不能な人物に率いられている。貿易相手の多角化は賢明だが時間がかかり、新市場向けのインフラ整備には巨額の投資が必要だ。しかし、その投資を呼び込む上で、米国との貿易協定ほど効果的なものはほとんどない。

カーニーが交渉から離脱した理由
その協定の追求は、両国を本格的な貿易戦争の瀬戸際まで追い込んだ。ドナルド・トランプ氏が「双方にとって非常に良い合意」がほぼまとまったと述べてから2日後の8月21日深夜直前、カナダの首相は交渉を打ち切り、対米輸出の5%に当たる200億ドル相当に最大50%の新たな関税が発動されることを容認した。トランプ氏が求めた通常の通商関係への代償は高すぎたのだ。
「我々の目標は、カナダ国民にとって最良の合意を確保することだった」とカーニー氏は8月22日に述べた。「いかなる代償を払ってでも合意するということは決してない」
8月25日、カナダは米国の新たな関税に対抗し、約200億ドル相当の米国からの輸入品に独自の関税を課すことを決め、発動は9月8日まで延期した。交渉離脱というカーニー氏の決断への支持はカナダ国内で広がっている。調査会社アンガス・リード研究所の世論調査によると、カナダ国民の76%がこの動きを支持している。国民が受け入れられない貿易協定に署名する政治的リスクは、トランプ氏の関税によるリスクをはるかに上回る。
経済的代償:インフレと雇用
長期的に見てトランプ氏の要求する合意がカナダにとっていかに不利なものであったとしても、それを拒否して新たな関税の発動を容認すれば、痛みはすぐに現れ始める。カナダ経済は今年第1四半期から第2四半期にかけて0.8%成長したが、2025年通年の成長率は、第1弾の関税が発動した同年3月以降、わずか1.7%にとどまった。失業率は7月に6.4%と2年ぶりの低水準を記録したが、インフレはじわじわと上昇している。
調査会社アバカス・データの代表デビッド・コレット氏は、カナダの有権者の3分の2近くが生活費を最も重要な課題に挙げていると指摘する。他の課題は遠く及ばない。「脅威は、カナダ国民が闘いに疲れることではない」とコレット氏は言う。「闘いが生活費の問題と衝突することだ」
それは避けられないように見える。カルガリー大学の経済学者トレバー・トンビ氏は、トランプ氏の新たな関税によりインフレ率が4%まで押し上げられると試算する。約9万人のカナダ人が職を失い、失業率は7%まで上昇する可能性がある。そして、これには報復関税がもたらす打撃は含まれていない。
エネルギー報復が国家の統合を脅かす
カーニー氏が9月8日に報復を強行すれば、経済的なリスクと同様に国内政治のリスクも伴う。オンタリオ州のダグ・フォード首相のような州首相は強硬姿勢で、フォード氏は7月、エネルギー供給を断てばカナダは「その気になれば米国を解体できる」と述べた。しかし、とりわけアルバータ州のダニエル・スミス首相ら他の州首相ははるかに慎重だ。アルバータ州は米国の輸入石油の約半分を供給しており、これまでトランプ氏の関税の対象からほぼ完全に除外されてきた。
カーニー氏はこれまで、カナダのエネルギー輸出を武器化することを否定してきた。おそらくスミス氏の支持者を刺激することを避けるためだろう。だが今、トランプ氏がカナダ製自動車への関税を50%へ倍増するという新たな脅しを実行した場合に、少なくとも米国向けカナダ産エネルギーに輸出税を課す可能性を検討するよう求められている。
「彼らが我々にそのエネルギーの供給停止を望んでいるとは思わない」とカーニー氏は8月22日に述べた。
カナダ産エネルギーへのいかなる課税も危険を伴う。トロントやモントリオールのような東部の大都市は、燃料の多くを米国を経由するパイプラインに依存しており、そこではアルバータ州産と米国産の両方の炭化水素が輸送されている。8月24日、トランプ氏は供給を止めることを遠回しに脅した。
より根源的な危険は、カナダの国家統合に対してだろう。10月にアルバータ州民は住民投票(請願により実施)に臨み、カナダ残留に満足しているか、それとも分離独立を問う2回目の拘束力ある住民投票の実施を望むかが問われる。フォード氏が、エネルギー輸出が米国に対するカナダのてこになると主張するのが正しいとしても、それは大きな自傷を伴わずに使える武器ではない。連邦政府が豊かなアルバータ州を最大の顧客から切り離すことの効果は予測困難だが、同州のカナダ残留を訴える論拠にはなりそうにない。
ケベック、中間選挙、そして持久戦
州政治も、カーニー氏がトランプ氏の合意を拒否した動機の一端を説明する。ケベック州民は10月に州議会選挙で新たな州政府を選ぶ。世論調査では、分離独立派のケベック党(パルティ・ケベコア)がわずかにリードしている。カーニー氏によれば、米国はカナダのフランス語と文化を保護する措置の骨抜きを求めてきたが、その要求に応じればケベック州の分離主義を勢いづかせる恐れもあったという。
カナダの報復関税は、共和党上院議員が接戦の中間選挙を強いられているミシガン州やメーン州などを狙い撃ちにしている。カナダからの輸入品の価格上昇によって悪化する米国の生活費問題がトランプ氏を再交渉へと向かわせ、ついにはカナダに一定の安定をもたらすことを、カーニー氏は期待するしかない。
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