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要点

  • 先進国全体の平均年間インフレ率は2%への低下が止まり、むしろ小幅に上昇した。ユーロ圏の8月のインフレ率は3.3%だった。
  • 主因はエネルギーだが、コアインフレ率は2.7%から2.9%に上昇し、23の先進国のうち3分の2でサービスインフレが上昇している。
  • ニュージーランド、日本、韓国が利上げを実施し、欧州中央銀行(ECB)は9月10日に2.5%への利上げが見込まれ、米連邦準備制度理事会(FRB)も追随すると市場はみている。

「ソフトランディング」を覚えているだろうか。2022〜23年に中央銀行家たちは、不況を招かずに高インフレを抑えることを夢見た。一部の国はその達成にあと一歩まで迫った。

だが勝利が手の届くところまで来たにもかかわらず、ますます多くの中央銀行が今、インフレとの闘いを再び強化している。物価上昇圧力は高まっている。世界は4年前の苦しみからはほど遠いが、診断は楽観できない。

2026年9月3日、米アラバマ州ロクスリーにあるLove'sのガソリンスタンドで無鉛ガソリンと軽油の価格を示す看板。
写真:Getty Images

中央銀行が再び利上げに動く

9月2日、ニュージーランド中央銀行が利上げした。タスマン海の対岸の政策当局者は今年すでに3回、借り入れコストを引き上げている。

日本銀行は6月に、韓国銀行は7月と8月に利上げした。欧州中央銀行(ECB)は9月10日に預金金利を2.5%に引き上げると予想され、そう遠くないうちに米連邦準備制度理事会(FRB)も追随すると多くの市場関係者はみている。

先進国全体で高まる物価上昇圧力を示す図表
図表:エコノミスト

インフレは低下が止まり、小幅に上昇

政策当局者は物価上昇圧力の高まりを示す証拠の増加に対応している(図表1参照)。先進国全体の平均年間インフレ率は、ほとんどの国で目標とする2%への低下が止まり、ここ数カ月はむしろ小幅に上昇している。

8月のユーロ圏の年間インフレ率は3.3%に達し、3年ぶりの高さとなった。スイスの年間インフレ率はわずか0.8%で、現代世界における驚異の一つともいえる経済政策を反映している。だがそれでも2年ぶりの高さだ。

また一部の国では、物価が「生活費危機」のつらい記憶を呼び起こしている。たとえばリトアニアではインフレ率が6%近くに達し、1月の3.1%から上昇した。

エネルギーが主導するが、コアインフレも上昇

エネルギーが主な元凶だが、それだけではない。中東での戦争により石油と天然ガスの価格が上昇した。欧州では天然ガス価格がイラン戦争前の2倍以上になっている。冬を前に欧州大陸の貯蔵タンクが補充されるにつれて、さらに上昇する可能性がある。

すでにユーロ圏のエネルギーインフレ率は楽に2桁に達している。一方、典型的な米国人はガソリン1ガロン当たり4ドル強を支払っており、年初の3ドル未満から上昇した。

しかし問題は燃料より大きいかもしれない。 エコノミスト の試算では、先進国全体でエネルギーと食品を除いた平均年率「コア」インフレ率は、2026年初めの2.7%から現在の2.9%に上昇した。

各国の基調的なインフレ圧力をより詳しく調べるため、労働価格に大きく左右される(変動の激しい商品よりは)サービス価格について、23の先進国で比較可能な数値を集めた。その結果、対象国の3分の2でサービスインフレが上昇している。

これは多くの国で賃金上昇率の指標が低下し続けているにもかかわらずのことだ。この不可解な結果の一つの説明は賃金がうまく測定されていないことであり、もう一つはサービス分野の生産性上昇率の低下により企業が賃上げを吸収しにくくなっていることだ。

期待は安定、だが政策当局者は待たない

これまでのところ、人々が将来予想する物価上昇率を上方修正している証拠はほとんどない。それこそが政策当局者を本当に怯えさせるものだが、市場に基づくインフレ期待の指標のほとんどはここ数週間、有意には動いていない。

ECBによる最近の調査では、消費者は数カ月前よりも今後1年間のインフレ率が低くなると予想している。数百万件のニュース記事を分析するコンサルティング会社Alternative Macro Signalsなどの洗練されたインフレ先行指標は、世界的なインフレ圧力の強まりを示してはいる。だがこれらのツールの予測実績はまちまちだ。

利上げに動く中央銀行を示す図表
図表:エコノミスト

新たな引き締め局面が始まりつつあるのかもしれない

将来がどうなるにせよ、多くの中央銀行に様子見をする気はない(図表2参照)。2021〜22年に政策当局者は急騰するインフレへの対応にもたついたと批判されており、政策決定者たちは同じ過ちを二度と繰り返したくないのだ。

対応する前にインフレが定着するのを「待つべきではない」とスロベニア中央銀行総裁は助言した。ECB理事会メンバーのイザベル・シュナーベル氏も最近、エネルギーコストが賃金に波及するまで待てば、政策当局者は再び後手に回ることになると警告した。

新たな引き締め局面は、まさに始まったところなのかもしれない。スイスの銀行UBSは、まだ引き締めを始めていない中央銀行の多くも近く引き締めに動くとみている。候補にはスウェーデンや、スイスさえ含まれる。ソフトランディングに見えたにもかかわらず、インフレとの闘いは実際には終わっていなかったのだ。

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